ご相談内容
「下の奥歯を失ってから時間が経ってしまった。食事がしにくいのでしっかり噛めるようにしたい。歯並びも悪くなってきたので、きれいに整えたい」とご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果
拝見したところ、歯と歯が並ぶ土台の骨「歯槽基底」の大きさの不調和により歯並びがガタガタになる「叢生(そうせい)」が全体的に生じており、また上下の前歯の重なりが深いため下の歯が見えない「過蓋咬合(かがいこうごう)」も認められました。
下の奥歯5本(右第2小臼歯/5番、左右第1大臼歯/6番、左右第2大臼歯/7番)が欠損したまま長く放置されていたことが原因で、噛み合う歯がなかった左上の奥歯(第1大臼歯)は本来の位置より下に伸びる「挺出(ていしゅつ)」が起き、左下の歯2本(第1小臼歯/4番、第2小臼歯)も内側に倒れたことで、下前歯の叢生が悪化したと考えられます。
このまま治療せずにいると、食べ物をしっかり噛むことができず消化吸収が悪くなったり、顎の関節に負担がかかることで「顎関節症」を引き起こしたりする可能性があります。
さらに左上の歯(第1小臼歯)の欠損部位は両隣の歯2本(犬歯/3番、第2小臼歯)を土台に人工歯を橋渡しにする被せ物「ブリッジ」が装着されており、お口を開けたときに銀歯が目立つことに加えて、歯の色が全体的に黄ばんでいるため見た目が良くない状態でした。
患者様は噛み合わせを安定させること、歯の色味や歯並びを整えて見た目をきれいにすることを希望されました。
行ったご提案・治療内容
理想的な歯並びは「アンテリアガイダンス」と呼ばれる、下顎を前方と側方へ動かしたときに上前歯の裏側と下前歯の先端のみが接触して奥歯には隙間がある状態です。
患者様の場合、適切なアンテリアガイダンスに導き、食べ物をしっかり噛めるようにするためには、以下の3つの治療が必要でした。
- 欠損した奥歯を補う
- 叢生の改善
- 深い噛み合わせを適切な高さに戻す「咬合挙上」
- 挺出した左上の奥歯(第1大臼歯)を歯ぐきに沈める「圧下」
奥歯がすべて欠損している状態での矯正治療は難しいことから、まずは①を実現するために人工歯根を埋め込む「インプラント治療」を行い、その後②~④の治療のためにお口全体の矯正治療を提案したところ、同意いただきました。
はじめに、インプラントを埋入しなければならない正しい位置と理想のゴールを知る目的で、患者様の歯型をもとに作製した模型の歯の部分をバラバラにして、治療後の歯並びを予測して並べ直す「セットアップ模型」でシミュレーションを実施します。
患者様の状況では、インプラント治療単独と矯正治療単独の治療が困難だったため、インプラント専門医と矯正専門医で情報の共有をしっかり行い、治療を進めています。
下の奥歯4本(右第2小臼歯、左第1大臼歯、左右第2大臼歯)には、シミュレーションで決定した位置に正確にインプラントを埋入しました。
次に、左上のブリッジの土台歯だった2本(犬歯、第2小臼歯)とインプラントを埋め込んだ4本それぞれに仮歯を装着したあと、上下すべての歯の表側に矯正装置を装着します。
矯正治療により叢生の改善、咬合挙上、挺出した左上奥歯(第1大臼歯)の圧下が実現し、適切なアンテリアガイダンスが得られたため、矯正装置を外しました。
半年間経過を観察したあと、左下のインプラント2本(第1大臼歯、第2大臼歯)にはそれぞれ単独の被せ物、右下の奥歯3本(第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯)にはインプラントを土台にしたブリッジ、左上の歯3本(犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯)には歯の大きさを調整して犬歯と第2小臼歯にそれぞれ単独の被せ物を装着しました。
被せ物の素材は患者様のご希望に沿い、天然歯のような透明感があり審美性と耐久性に優れた「セラミック」を選択しています。
また、天然歯の黄ばみを改善するために、歯科医院で施術する「オフィスホワイトニング」と、ご自宅で行っていただく「ホームホワイトニング」を併用した「デュアルホワイトニング」をお口全体に施しました。 デュアルホワイトニングは短期間で理想の白さになり、色の後戻りもしにくいのがメリットです。 オフィスホワイトニングは1回、ホームホワイトニングは約3ヶ月ほど行って治療を完了しています。
術後の経過・現在のご様子
インプラントを埋め込んだことで食べ物がしっかり噛めるようになりました。歯の黄ばみも改善し、歯並びも整ったことで美しい口元を取り戻しています。
患者様には「40代で入れ歯を避けることができてよかった。なんでも噛めて、コンプレックスだった見た目もきれいになってとてもうれしい」と大変ご満足いただきました。
今後は歯周病予防のため、定期的にご通院いただきます。
この治療のリスクについて
- 外科手術のため、術後に痛みや腫れ、違和感を伴います
- メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎などにかかる可能性があります
- 治療中、装置によってまれに頬の内側が傷つき、口内炎になる場合があります
- 歯の移動に伴って、違和感や痛みを感じる場合があります
- 得られるホワイトニング効果は歯の質により様々です。予定通りの白さに達しない場合もあります
- 自費診療(保険適用外治療)です
- 年齢・性別
- 40代女性
- 診療種別
- 自由診療
- 治療期間の目安
- 2年
- 治療費総額の目安
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矯正治療 825,000円
インプラント治療 2,000,000円
デュアルホワイトニング 49,500円+ホームホワイトニング 11,000円(ジェルのみ4本追加購入)
治療前 | 治療後 |
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模型による治療のシミュレーション |
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クリニックより
長期的に安定する噛み合わせを提供でき、当院もうれしく思っております。
当院では様々な専門医が在籍し連携を取っているため、ひとつのクリニックで多角的な治療を行い、患者様によりご満足いただける環境で治療を提供することが可能です。
インプラント治療や歯の黄ばみ、歯並びでお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。
この治療にあたった矯正専門医
中井 丈生(なかい たけし)
北海道大学 歯学部 卒業
歯学博士
日本矯正歯科学会 会員
日本舌側矯正歯科学会 会員
Harmony Lingnal 認定Dr
Invisalign 認定Dr
Digital orthodontics study club 会員
この治療にあたったインプラント専門医
佐藤 成実(さとう なるみ)
東京歯科大学 卒業
東京医科歯科大学インプラント外来医局員
日本口腔インプラント学会 専門医